Episode さんびゃくよんじぅごぉ 『戦場カメラマン、危うし (201162)

頼んであったメガネを取りにショッピングモールに行くと、一階の広場にものすごい人だかりが・・・。
戦場カメラマンの渡部陽一さんのトークショーがあるということなので、そういうことなのか、とフラリと立ち寄ってみた。
司会者の挨拶のあと渡部さんが登場すると、「ワ〜!」「キャ〜!!」 もう、アイドルのノリです。

渡部さんはその場の人たち全てに目線を配り、独特なジェスチャーでゆっくりと大きな声で話し始めた。
始めは、彼の一挙手一投足に過敏に反応していた観客も、戦場での壮絶な体験に話が及ぶと、
いつしか会場の笑いは消え、その話に引き込まれていった。
戦地で少年兵に銃を突きつけられ殴られたことや、イラクで拉致されそうになったが、雇っていたSPに間一髪助けられたことなど、
まず一般人が体験できない話に驚いた。

以前、私はイラクで公演したことがあったが、湾岸戦争が起こる前の話で、その時は平和そのものだった。
現在のイラクは、誰が敵でどこで自爆テロが起こるかわからない。
修羅場をくぐってきた人というのはどこか違う。

トークが終わり、マイクを手に女の子が質問した。
「朝は、なに食べたんですか?」
「明太子おにぎり・・・2個と・・・缶コーヒー・・・です!」
渡部さんは、その子の目を見ながらやさしく答えた。
テレビで見るよりもさらに丁寧に子どもに接し、自分のサイン色紙をプレゼントされていた。
周りの人たちの目は、「サインもらってよかったわねえ。よしよし。」ではなく、
「あたしかて欲しいわ!」・・・のようでした。

トークショーが終わり、渡部さんが退場することに。
たまたま私がいる方向へ歩いて来られたが、今までお行儀よくしていた観客の皆さん、人が変わったようにドドドッと渡部さん目掛けて突進してきた。
「こっち向いてぇ〜、わたなべさ〜〜ん!!」
関西の“おばちゃんパワー”である。
携帯カメラをガンガン向けて、もう新興宗教の教祖様に群がる信者のよう・・・。
私までもが人の渦に巻き込まれ、アレ〜〜状態。
私と50センチまで最接近した渡部さんの表情は、笑顔とともにこわばっていた。
パニック寸前の中、ようやく控え室へと消えていった渡部さん、
「戦場よりも怖かった。」と言ったとか言わなかったとか。
“修羅場”をかいくぐった渡部さん。本当にお疲れさまでした。



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